食品製造や食に関わる産業の皆さんは、最近、HACCPとよく耳にするのではないでしょうか。
HACCPという言葉が独り歩きしているようにも思えますが、しっかりと理解して、食の安全に努めることは重要です。
このページでは、HACCPと食品衛生法について、制度や考え方の違いを解説します。
HACCPとは
HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字をとり、ハサップ、ハセップ、ハシップなどとよばれます。
具体的には、食品を製造する工程内で危害が起きる可能性を分析し、効率よく且つ連続的に管理することで安全を確保する管理手法のことを指します。
つまり、HACCPは管理手法であり、国内の厚生労働省や国際機関で推奨されている手法ではありますが、行うことが法律で義務付けられていたりすることはありません。
HACCP – 厚生労働省
HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法です。
この手法は 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され,各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。
食品衛生法とは
食品衛生法とは、厚生労働省が所管する法律で、日本国内での飲食によって生まれる“危害の発生を防止”するためのものです。
食品と添加物をはじめ、食品に直接触れる器具や容器包装(食器、食品機械、製造機械部品等)などの基準・表示・検査などの原則が定められています。
つまり、法律であるため定められた基準などを守る必要があり、食品衛生法によって規制されています。
食品衛生法(昭和22年12月法律第233号)-厚生労働省
1. 目的
食品衛生法は食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的としており、主な食品営業の他、食品、添加物、器具、容器包装等を対象に飲食に関する衛生について規定している。食品衛生においては、食品等の取り扱いにあたっては、清潔で衛生的に行うことが原則である。
2. 営業許可と施設基準
飲食店等のように、公衆衛生に与える影響が著しい営業(34業種)を営むには都道府県知事等の許可が必要である。また、この許可に際して5年を下らない有効期間等の必要な条件がつけられる。これらの業種の営業を営む場合には、都道府県知事が業種毎に定めた施設基準に適合していなければならない。
また、飲食店営業、喫茶店営業、食肉販売業及び氷雪販売業等にあっては、都道府県知事が定める基準により「食品衛生責任者」を置かなければならない。3. 食品等に対する規制
(1) 次の事項に該当する不衛生食品等は販売等が禁止されている。
ア 腐敗、変敗したものまたは未熟なもの
イ 有毒、有害な物質が含まれ、もしくは付着しまたはこれらの疑いのあるもの
ウ 病原微生物により汚染されているものやその疑いのあるもので人の健康をそこなうおそれのあるもの
エ 不潔、異物の混入、添加などにより人の健康をそこなうおそれのあるもの(2) 厚生労働大臣は、販売の用に供する食品、添加物の製造等の方法について基準を定め、成分について規格を定めることができる。規格、基準の定められた食品等については、基準に合わない方法による製造、加工、使用、調理、販売等、規格に合わない食品等の製造、輸入、加工、販売等は禁止されている。
・ 主な規格基準の内容
ア 食品(成分規格、製造基準、加工基準、調理基準、保存基準)
イ 添加物(成分規格、保存基準、製造基準、使用基準)
ウ 器具及び容器包装(材質別規格、用途別規格、製造基準)(3) 表示の基準が定められている場合には、基準に合う表示のないものは、販売したり、販売の用に供するために陳列したり、または営業上使用したりしてはならない。
(4) 販売の用に供し、または営業上使用する食品等を輸入しようとする者は、厚生労働大臣に届け出なければならない。
4. 監視指導
都道府県等の保健所には、食品衛生に関する専門知識を有する食品衛生監視員が配置されており、営業施設に対し監視、指導を行っている。
まとめ:HACCPと食品衛生法
ここまでHACCPと食品衛生法について解説してきましたが、まとめると
HACCPは、食の安全を確保するための管理手法であり、食品製造を行う企業が取り入れるか否かを決められるもの。
食品衛生法は、食の安全を確保するための法律で、定められた基準やルールを守る必要があるもの。
というように比べられるのではないでしょうか。
なかなか理解が進まなかった方は参考にしていただけましたでしょうか。
食の安全確保には、どちらも必要不可欠であることには変わりありません。
きちんと理解して、各企業様が安全な食品を製造していただけるとありがたいですね。