シリコンゴムは優れた特性を持つと言われますが、実際にどのような特性があるかご存知ですか。
このページでは、汎用シリコンゴムの特性・特徴について解説します。
目次
シリコンゴムの特性
耐油性
シリコンゴムは、高温での耐油性に優れた特性を持っています。
耐油性に優れるNBRやクロロブレンゴムに比べも、100℃以上の温度ではシリコンゴムの方が耐油性に勝ります。
しかし、100℃以下の場合はNBRやクロロブレンゴムの方が耐油性に優れます。
耐溶剤性・耐薬品性
シリコンゴムは、耐溶剤性・耐薬品性に優れた特性を持っています。
特に、極性有機化合物に強く、アルコールやアニリン、希酸、希アルカリにほとんど侵されません。膨潤による容積増加も15%程です。
ベンゼンやトルエンなどの無極性有機化合物に触れると膨潤しますが、材質の分解や溶解がなく溶剤・薬品を取り除けば元の状態に戻ります。
耐熱性・耐寒性
シリコンゴムは、耐熱性・耐寒性に極めて優れた特性を持っています。
150℃ではほとんど特性に変化が無いため、この温度帯では半永久的に使用することが可能です。
製品によっては、200℃でも耐えるシリコンゴム、350℃以上でも短時間であれば耐えるなど、耐熱性に優れています。
また、-60℃でも弾力をもつ製品もあるため、耐熱性・耐寒性の双方に優れた特性を持っていると言えます。
耐候性・耐オゾン性
シリコンゴムは、対候性に極めて優れた特性を持っています。
コロナ放電によって発生するオゾンでもシリコンゴムはほとんど影響を受けません。
透明性・着色性
微細なシリカを配合することで透明性に優れたシリコンゴムを製造することが可能です。
また、透明性に優れるため、着色も容易にでき、色鮮やかな製品を製作することもできます。
※上記は、シリコンゴムの生ゴム・シリコンコンパウンド製造時の解説となります。完成品への着色は非粘着性の特性を持つため困難となります。
耐水性・耐スチーム性
シリコンゴムは、長い時間の間、水に漬けても吸水量が1%ほどと、耐水性に極めて優れた特性があります。
冷水、温水であっても吸水量はかわらず、強度や特性にほとんど影響しません。
また、常圧下であればスチームに触れても劣化しません。
しかし、一定温度以上の加圧・高圧スチームであると特性が低下することがあります。
非粘着性・離型着性
シリコンゴムは、非粘着性に優れた特性を持っています。
そのため、生理的不活性が良いと言えます。
また、非粘着性・離型着性を持っているため、接合や塗装(色付け)が困難である側面もあります。
熱伝導性
シリコンゴムは、約0.2W/m・Kと、熱伝導率に優れた特性を持っています。
製品によっては、無機質充填剤を多く配合することで1W/m・K以上の熱伝導率を持つシリコンゴムもあります。
電気絶縁性
シリコンゴムは、1~100TΩ・mと電気絶縁性に優れた特性を持っています。
水に漬けても電気絶縁性は低下しないため、絶縁素材として適しています。
導電性
通常のシリコンゴムは、絶縁体のため導電しません。ただし、カーボンブラックを配合することで導電特性が加わります。
カーボンブラックを配合したシリコンゴムは、導電性シリコンゴムと呼ばれます。
カーボンが配合されたシリコンゴムであってもその他の特性は通常のシリコンゴムとほとんど変わりません。
難燃性
シリコンゴムは、燃えにくい素材ではありますが、一度着火すると燃え続ける特性があります。
しかし、難燃剤を配合することで難燃性や自己消炎性を追加することもできます。
防振性
通常のシリコンゴムは、損失係数が小さいため、防振用途には適していません。
防振用途で使用するには、添加物などを加え、防振性能を高める必要があります。
シリコンゴムの機械特性・物質特性
外観・外見
シリコンゴムの外観・外見は、微細なシリカによって作られた透明のものから、半透明のものまで様々です。
透明のシリコンゴムに添加物を加えると鮮やかな色になります。
硬さ・硬度
シリコンゴムの硬さ・硬度は様々で、汎用シリコンゴムが40°~60°となります。
低硬度グレードであれば、2°ほどの柔らかいシリコンゴムや高硬度グレードであれば90°という硬いシリコンゴムもあります。
比重
シリコンゴムの比重は一般的に0.95~0.98となります。
引裂き強さ
通常のシリコンゴムの引裂き強さは、9.8KN/m程と天然ゴムなどのその他ゴム素材と比べて劣っています。
しかし、高引裂きタイプのシリコンゴムも存在し、95KN/mの超高引裂き強さの特性をもつ製品もあります。
シリコンゴムの特性表(一覧でわかる!)
シリコンゴムの一般特性 | |
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耐油性 | ・高温での耐油性に優れる ・100℃以上であればNBR、クロロブレンゴム以上 |
耐溶剤性・耐薬品性 | ・極性有機化合物に強い ・無極性有機化合物に膨潤するが、取り除くと元の状態に戻る |
耐熱性・耐寒性 | ・150℃でもとんど特性は変化しない ・350℃以上でも短時間であれば耐えることもある |
耐候性・耐オゾン性 | ・コロナ放電によって発生するオゾンでもほとんど影響を受けない |
透明性・着色性 | ・通常は半透明 ・微細なシリカを配合したシリコンゴムは透明性に優れる ・透明性に優れるため着色も容易 |
耐水性・耐スチーム性 | ・長い時間の間、水に漬けても吸水量が1%ほど ・冷水、温水であっても吸水量は変わらない ・常圧下であればスチームに触れても劣化しない |
非粘着性・離型着性 | ・生理的不活性が良い ・接合や塗装が困難 |
熱伝導性 | ・約0.2W/m・Kの熱伝導率 ・無機質充填剤を多く配合することで1W/m・K以上も可能 |
電気絶縁性 | ・1~100TΩ・mの電気絶縁 ・水に漬けても電気絶縁性は低下しない |
導電性 | ・絶縁体のため導電しない ・カーボンブラックを配合で、導電性シリコンゴムに |
難燃性 | ・一度着火すると燃え続ける ・難燃剤を配合することで難燃性や自己消炎性を追加 |
防振性 | ・損失係数が小さい ・防振用途には適していない |
シリコンゴムの機械特性・物質特性 | |
外観・外見 | ・汎用シリコンゴムは半透明 ・微細なシリカで作られると透明 ・添加物を加えて着色可能 |
硬さ・硬度 | ・汎用シリコンゴムが40°~60° ・低硬度グレードは2° ・高硬度グレードは90°も |
比重 | ・汎用シリコンゴムは0.95~0.98 |
引裂き強さ | ・汎用シリコンゴムは9.8KN/m程 ・95KN/mの超高引裂き強さのシリコンも有 |
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まとめ
シリコンゴムがどのような特性を持つかわかりましたか。
シリコンゴムだけでなく、その他のゴム素材との比較をしたいという方は「ゴムの種類」を、似た特性を持つフッ素ゴムとの比較をしたい方は「シリコンゴムとフッ素ゴムの違い」を参考にしてください。
また、そもそもシリコンゴムって何?という方は「シリコンゴムの基礎知識」を参考にしてください。
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