ゴム素材の材質・種類は原料や生成方法により多種多様にあります。
天然の樹液から精製された天然ゴムや人工的に作られた合成ゴム。合成ゴムも材質によって様々な特性があり、特性ごとに多種多様な場所で使用されています。
このページでは、ゴム素材の材質・種類、全18種の概要と特長・特性を解説します。
目次
- 1 ゴムの種類と特徴・特性
- 1.1 天然ゴム NR
- 1.2 ニトリルゴム NBR
- 1.3 シリコンゴム SI(シリコーンゴム、ケイ素ゴム)
- 1.4 フッ素ゴム FKM
- 1.5 ウレタンゴム U
- 1.6 アクリルゴム ACM
- 1.7 イソプレンゴム IR
- 1.8 スチレンゴム SBR(スチレン・ブタジエンゴム)
- 1.9 ブタジエンゴム BR
- 1.10 ブチルゴム IIR(イソブチエン・イソプレンゴム)
- 1.11 エチレン・プロピレンゴム EPM
- 1.12 エチレン・プロピレン・ジエンゴム EPDM
- 1.13 エチレン・酢ビゴム EVA
- 1.14 クロロプレンゴム CR
- 1.15 ハイパロン CSM(クロロスルホン化ポリエチレン)
- 1.16 塩素化ポリエチレンゴム CM
- 1.17 エピクロルヒドリンゴム CO/ECO
- 1.18 多硫化ゴム T(チオコールゴム)
- 2 ゴムの種類別、早見表
- 3 ゴムと熱硬化性エラストマー
- 4 まとめ
- 5 今すぐ読みたい!保存用PDF資料
ゴムの種類と特徴・特性
天然ゴム NR
天然ゴムは、天然の樹の樹液から精製されたゴムです。ゴムの木からとれる樹液(ラテックス)が天然ゴムの原料となります。
反発弾性、引裂き強さ、圧縮永久歪、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性などに優れた特性を持ち、タイヤなど、自動車部品の用途としてたくさん使用されています。
生産国は、東南アジアを中心に、タイ、インドネシア、ベトナムの順に生産量が多くなっています。日本の輸入量は、インドネシアが7割程、タイが3割程と2か国からの輸入でほとんどを占めています。
特性
耐熱性 | 120℃ |
---|---|
耐寒性 | -50~-70℃ |
耐老化性 | ○ |
耐オゾン性 | × |
耐候性 | ○ |
耐炎性 | △ |
ニトリルゴム NBR
ニトリルゴムは、耐油性特殊ゴムの代表格のゴムです。
耐油性に優れる特性を持つため、工業用品・工業部品としてたくさんの用途として使用されています。代表的な用途としては、Oリングやオイルシール、オイルホースなどです。
特性
耐熱性 | 130℃ |
---|---|
耐寒性 | -10~-20℃ |
耐老化性 | 〇 |
耐オゾン性 | ✖ |
耐候性 | 〇 |
耐炎性 | △ |
シリコンゴム SI(シリコーンゴム、ケイ素ゴム)
シリコンゴムは、シリコーン樹脂(シリコーンを主成分とする合成樹脂)で形成された合成ゴムです。
シリコーンゴム、ケイ素ゴムとも呼ばれます。
耐熱性をはじめ、耐水性、耐薬品性、耐候性、耐オゾン性、耐寒性に優れているため、食品、薬品、医療品などの部品をはじめ、製造現場でも多く使われています。
特性
耐熱性 | 280℃ |
---|---|
耐寒性 | -70℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | 〇 |
フッ素ゴム FKM
フッ素ゴムは、耐油性、耐化学薬品性、耐熱性、耐炎性、耐候性、耐オゾン性など他の合成ゴムとは比べ物にならない高質の合成ゴムです。
優れた特性を持つため、食品、薬品、医療品などの製造部品、設備などで多く使われています。しかしながら、高級な素材のため、家庭用などではあまり使用されていません。
特性
耐熱性 | 300℃ |
---|---|
耐寒性 | -50℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ◎ |
ウレタンゴム U
ウレタンゴムは、耐摩耗性、耐候性、耐油性に優れていて、大きな荷重負荷能力と、優れた反発弾性がある合成ゴムです。
耐磨耗性が優れ、反発弾性に優れた特性を持つため、耐荷重が求められる車輪として多く使用されています。
特性
耐熱性 | 80℃ |
---|---|
耐寒性 | -30℃ |
耐老化性 | ◯ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | △ |
アクリルゴム ACM
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分に持つ合成ゴムです。耐熱油性、耐熱老化性、耐侯性に優れた特性があります。
ガソリンや軽油などに耐薬品性が優れているため、自動車のトランスミッションやクランクシャフト、バルブシステムの周辺部品として広く使用されています。
特性
耐熱性 | 180℃ |
---|---|
耐寒性 | 35℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | △ |
イソプレンゴム IR
イソプレンゴムは、主成分が天然ゴムとおなじであるため、人工天然ゴムとも言われる合成ゴムです。
天然ゴムには、ポリイソプレンの他に微量のタンパク質や脂肪酸を含みますが、イソプレンゴムには不純物がありません。広い温度範囲で軟化しにくい弾性があるのが特長です。
天然ゴムと比べると、引張強さ、引裂き強度が若干劣り、耐油性・耐熱性にも劣ります。
用途としては、自動車や航空機用のタイヤをはじめ、搬送用ベルト、粘着剤などに使用されています。
特性
耐熱性 | 120℃ |
---|---|
耐寒性 | -50℃ |
耐老化性 | ◯ |
耐オゾン性 | ✖ |
耐候性 | ◯ |
耐炎性 | ✖ |
スチレンゴム SBR(スチレン・ブタジエンゴム)
スチレンゴムは、最も流通している合成ゴムです。
耐熱性、耐摩耗性、耐老化性、機械強度などには優れますが、耐寒性や引き裂き強度で他の汎用ゴムより劣ります。
スチレンゴムは、天然ゴムの代用ゴムとして開発されたため、特性も天然ゴムと類似しています。
天然ゴムに比べると、弾性や機械的強度、耐磨耗性などが優れています。しかしながら、耐油性に劣るため、Oリングやパッキン、オイルシールなど、シール用途としては適していません。
特性
耐熱性 | 120 |
---|---|
耐寒性 | -30℃ |
耐老化性 | ◯ |
耐オゾン性 | ✖ |
耐候性 | ◯ |
耐炎性 | ✖ |
ブタジエンゴム BR
ブタジエンゴムは、汎用合成ゴムの一種で、天然ゴム、SBRの次に需要の多いゴムです。1990年の統計では合成ゴムの20%を占めていたようです。耐摩擦性がブタジエンゴムの一番の特長です。
天然ゴム(NR)やスチレンゴム(SBR)とブレンドされて、タイヤとして使用されます。
その他の用途としては、防振ゴムやホースなど、工業用品として広く使用されています。
特性
耐熱性 | 120℃ |
---|---|
耐寒性 | -70℃ |
耐老化性 | ◯ |
耐オゾン性 | ✖ |
耐候性 | ◯ |
耐炎性 | ✖ |
ブチルゴム IIR(イソブチエン・イソプレンゴム)
ブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンからできた合成ゴムです。耐熱老化性,耐薬品性,耐候性など特長があります。
用途としては、タイヤチューブ、インナーライナーなどをはじめ、防振ゴム、ガスケット、スチームホース、耐熱ベルトなど、工業用品に広く使用されています。
特性
耐熱性 | 150℃ |
---|---|
耐寒性 | -30℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ✖ |
エチレン・プロピレンゴム EPM
エチレンプロピレンゴムは、エチレンとプロピレンからできた合成ゴムです。耐候性、耐水性に優れた特長があります。
スチレンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)に次ぐ生産量がある合成ゴムです。また、比重が一般的なゴムの中で最も小さいことも一つの特徴です。
用途としては、自動車部品をはじめ、各種工業用品、建築用製品など幅広く使用されています。
特性
耐熱性 | 150℃ |
---|---|
耐寒性 | -40℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ✖ |
エチレン・プロピレン・ジエンゴム EPDM
エチレン・プロピレン・ジエンゴムは、硫黄化合物による加硫を可能にするため、エチレン・プロピレンゴムに少量のジエンモノマーを共重合した合成ゴムです。
耐候性・耐寒性・耐オゾン性・耐老化性・溶剤性などに優れた特長があります。しかしながら、金属や樹脂、その他ゴムとの接着性が悪い短所があります。
用途としては、自動車部品をはじめ、電線被覆やコンベヤベルトなど、工業用部品として使用されています。
特性
耐熱性 | 150℃ |
---|---|
耐寒性 | -40℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ✖ |
エチレン・酢ビゴム EVA
エチレン酢ビゴムは、柔軟性、透明性、耐衝撃性に優れた特長がある合成ゴムです。
用途としては、自動車用マットガードなどの工業用途をはじめ、人工芝マット、スキー用具など一般用品のぶひんとしても使用されています。
特性
耐熱性 | 180℃ |
---|---|
耐寒性 | -20℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ✖ |
クロロプレンゴム CR
クロロプレンの重合によって得られる合成ゴムです。耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐油性が天然ゴムよりも優れており、加工も容易なのが特長です。
用途としては、自動車部品をはじめ、ワイヤ・ケーブルなどの被膜としても多く使用されています。
特性
耐熱性 | 130℃ |
---|---|
耐寒性 | -35℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◯ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ◯ |
ハイパロン CSM(クロロスルホン化ポリエチレン)
ハイパロンは、特に耐オゾン性に優ていて、耐酸、耐アルカリ性にも優れる特長がある合成ゴムです。
用途としては、ホースや電線被覆をはじめ、身近な所ではエスカレータの手すりとしても使用されているようです。
特性
耐熱性 | 160℃ |
---|---|
耐寒性 | -20℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◯ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ◯ |
塩素化ポリエチレンゴム CM
塩素化ポリエチレンは、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、耐油性に優れた特長がある合成ゴムです。
用途としては、電線の被膜やライニングなどに使用されています。
特性
耐熱性 | 180℃ |
---|---|
耐寒性 | 0℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | △ |
エピクロルヒドリンゴム CO/ECO
エピクロルヒドリンゴムは2種類の生成方法があり、エピクロロヒドリンの単独重合体はCO、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドの共重合体がECOと表記します。
耐油性、耐ガソリン性、耐オゾン性、低ガス透過性に優れた特性を持ちます。
用途としては、自動車のオイルホースやガスケットをはじめ、ロール、電線被覆、接着剤などに使用されます。
特性
耐熱性 | 180℃ |
---|---|
耐寒性 | -20℃ |
耐老化性 | ◎ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ◯ |
多硫化ゴム T(チオコールゴム)
多硫化ゴムは、アメリカのチオコール・ケミカル社が生産・販売を始めた合成ゴムでチオコールと呼ばれています。耐油性、耐溶剤性、耐水性、耐疲労性に優れたゴムです。
国内では、固体状ではあまり使用されておらず、液状の多硫化ゴムが80%以上を占めているといわれています。
用途としては、弾性シーリング材、道路などの目地シールなどに使用されています。
特性
耐熱性 | 80℃ |
---|---|
耐寒性 | 10℃ |
耐老化性 | ◯ |
耐オゾン性 | ◎ |
耐候性 | ◎ |
耐炎性 | ✖ |
ゴムの種類別、早見表
上記で解説したゴムの種類(名称、記号)と特性(耐熱性、耐寒性、耐老化性、耐オゾン性、耐候性、耐炎性)を表でまとめました。
名称 | 天然ゴム | ニトリルゴム | シリコンゴム | フッ素ゴム | ウレタンゴム | アクリルゴム | イソプレンゴム | スチレンゴム | ブタジエンゴム | ブチルゴム | エチレン・プロピレンゴム | エチレン・プロピレン・ジエンゴム | エチレン・酢ビゴム | クロロプレンゴム | ハイパロン | 塩素化ポリエチレンゴム | エピクロルヒドリンゴム | 多硫化ゴム |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
記号・略号 | NR | NBR | SI | FKM | U | ACM | IR | SBR | BR | IIR | EPM | EPDM | EVA | CR | CSM | CM | CO | T |
耐熱性 | 120℃ | 130℃ | 280℃ | 300℃ | 80℃ | 180℃ | 120℃ | 120℃ | 120℃ | 150℃ | 150℃ | 150℃ | 180℃ | 130℃ | 160℃ | 180℃ | 180℃ | 80℃ |
耐寒性 | -50℃ | -10℃ | -70℃ | -50℃ | -30℃ | 35℃ | -50℃ | -30℃ | -70℃ | -30℃ | -40℃ | -40℃ | -20℃ | -35℃ | -20℃ | 0℃ | -20℃ | 10℃ |
耐老化性 | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
耐オゾン性 | × | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | × | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
耐候性 | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
耐炎性 | △ | △ | ○ | ◎ | △ | △ | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | △ | ○ | × |
ゴムと熱硬化性エラストマー
ここまで種類別に解説してきたゴムですが、ゴムは熱硬化性エラストマーに分類されます。
ゴムによく似た熱可塑性エラストマーもありますが、熱可塑性エラストマーは熱を加えると軟化して冷やせばゴム状に戻ります。
一方で、熱硬化性エラストマーであるゴムは、熱を加えても軟化しません。
エラストマーについては「ゴムとエラストマーの違い。熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマーとは」を参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ゴムの種類はたくさんあり、種類によってさまざまな特色があり、特性や性質もいろいろであることがわかっていただけたと思います。
素材選びの際に参考にしてください。
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